イデンα
虫捕りの楽しみには、飛ぶ虫や鳴く虫を追いかけて捕ったりすることばかりに限らない。他にも様々な方法がある。例えば、かわいい虫たちを見守ったり、彼らのお世話をしたりすることにも、魅力があって、楽しい。虫を捕るのがとりわけ好きなぼくには、たまに彼らと一時「休戦」する必要がある。そうすれば、ぼくの存在に戦々恐々とした虫の世界は元の和気藹々な雰囲気をとり戻す。わたしも気持ちをちょっと切り替える。そんな時、なぜかどこともなくカミキリムシが空から落ちてきて、ぼくのそばに止まり、遊んでくれる。
カミキリムシは甲虫の一種で、カブトムシのような甲虫がほとんどいなかったぼくの町では、ずいぶん人気があるものだった。指一本くらいとサイズは小さく、敵を威嚇するために「キーキー」の音を出したりする。人間のぼくたちには、まさに赤ちゃんのようにしか見えなくて、とてもかわいい。それから、首の両側に角があって、さらに上にはアニメ作品によく登場される鞭剣(むちけん)という武器みたいな長い触角がある。これ以外にも多種多様な面白い違いがいっぱいある。かっこよすぎる甲虫だ。
カミキリムシの捕り方は、正直、説明する必要はないと思う。他の虫よりはるかに静かな彼らは、木の幹や葉っぱに止まっていても、見つかりにくいのだ。たとえ見つかる可能性があっても、それより前にトンボやチョウなどに注意を惹かれてしまった場合がずっと多かった。夜になって灯火でカミキリムシを集める方法や、網を使う捕り方もあるそうだ。しかし、そこまでしなくても、彼らは簡単に落ちてきてしまうから、見つけるのはまったく難しいことではない。なんだか魔法使いが召使いを呼び寄せるような感じだ。
カミキリムシは、中国語からきた「天牛(テンギュウ)」という言葉で呼ばれ、髪まで切れるほどの鋭い顎を指したことだろう。ちなみに、ぼくが出会ったカミキリムシはすべて「胡麻斑髪切(ゴマダラカミキリ)」という、真っ黒な体に白い斑が付いているカミキリムシだった。これには「星天牛(ホシカミキリ)」という別称もあって、まるで夜空に星が瞬くようだ。この名前は彼らにすごく似合っていて、きれいだと思う。本来、彼らが街路樹の幹から落ちてきたに過ぎないのだが、星空になぞらえられたこの呼び名から、彼らがやはり空にぴったりではないかと考えるようになった。
ピー・エス:カミキリムシは人間の観点ではほとんど害虫で、嫌われている。それでも、ぼくは彼らを傷つけることをしたくない。遊びで死んだのも何匹いるけど、そんな時に、ぼくは美しいパターンをもつかれらの硬い翅を収集する。五つあれば、全部自分の指先につけて、最高のネイルアートだ。あれは本当に楽しかった。