2011年11月15日火曜日

洋子先生が選んだ傑作短歌(二)

日本語学習歴三年以上の学生と二週間余り短歌の勉強をした。ごく簡単な規則を教え、字余り字足らずを調整するための否定の「ぬ」や「ず」の使い方、助詞を入れるかいれないかなどの説明もした。夜眠れないのは年寄りの特権かと思っていたが、いろいろ悩みをもつ若者が眠れない夜に考えることなど、思いがけない内容の短歌を詠んでくれたのがうれしかった。恋歌を書き綴った男子学生が幾人もいたが、お見せできないのが残念である。(掲載は学生名順)

日本では忠犬というハチ公は全国的に有名でした
柴犬を飼っているので私はその和の魅力に惚れました(アイビー)

庭に来たお腹のすいた黒いリス、ブラジルからか聞いてみようか
一匹の欲張りリスは食べないでピーナッツ隠す毎日隠す(アリシャ)

木から葉がゆっくりと降る雪みたい秋は一番きれいと思う
ある人は寒い日なんか嫌いだが寒い日のロッキー清らかに見える(アレックス)

人間は雲に似ている悲しいとダークになって雨がザーザー
空の星みていた時に私だけ見ていた星があっただろうか(エイダ)

冬が来た起きる時には窓の外雪がゆっくり漂ってくる
ひと目見て白い世界がすぐ見えてあの情景はひさしぶりだね(エバン)

オービッドは詩人ではないけど彼の短歌は何とか美しいよね
この年は雪はまだまだでも今日はすごく寒くて冬が来るんだ(オービッド)

ハロウィーンの怖さが好きだ墓のようそんな感じが楽しいじゃない?
日本語の可愛い音があいうえお漢字もきれい単語は絵です(カーリー)

朝ご飯夜の疲れにコーヒーは俺を目ざませ良い友達だ
幼い日時間があるから時計はいらず時間気になる大人になると(カルビン)

口を閉じ携帯使って会話する故に我らは言葉失う
ああ僕は小鳥の骨を木の下に包んで埋める切り羽とともに(クリス)

夏が来る花火の下の恋人といつまでも付き合いたいと願う
秋の風素敵な葉っぱ降り続く美しさはもう行ってしまった(サム)

毎日の高い楽しさ満足は友達と一緒いつも一緒
宿題は人生の邪魔面倒くさいでも最後には良い人にする(ジェイピー)

今午前二時半ですが眠れない短歌を詠むのは難しすぎる
携帯はシグナルが無いところでは緊急なのに連絡できない(ジャッキー)

恋をして世界が変わる色無き陽輝き始める穏やかになる
田中さんあなたが好きだ未熟だけど幸せにする僕と暮らそう(ジュンワン)

好きな物コンピュータか食べ物かやっと気づいた私の子犬
欲しい物彼女が欲しいどうしよう告白するか諦めようか(シェルダン)

真夜中は何も見えないただ俺と寂しい風に短歌を詠んだ
午前五時寝られない夜何故だろう忘れられない君の香りが(ショーン)

秋の池いろいろな葉はバラバラに浮かんでいます色美しく
我々のうまく言えないさようなら何年か後に思い出になる(ジョアナ)

後悔はいらないものだ前を見て振り向かないで歩き続ける
夢で見た謎の世界の深い森蛍の光またたき消えた(ステファニー)

プリクラは写真取る時キラキラといい思い出も多く作れる
思い出は月が見守る約束を果たして未来に再び会おう(ステファニ P)

僕は今朝悲しい感じで目が覚めた日の出をみたら元気になった
初めての花を見た時うれしくて自由を感じ花ばかり見る(ダニエル)

勉強をするために会う友が来て今日も一言「テストもうダメ」
紅葉はきれいだけれど一瞬にやつれた枝を残していくよ(ヒュンウー)

カルガリー春夏秋冬雪が降る実はこの町冬しか来ない
あまりにもなまりの強い外人が日本に行くとかなり目立つよ(ブランドン)

すしが好き鮭とマグロはおいしくて新鮮がいい古いのはダメ
人間は複雑怪奇恋憎悪この世界には住みにくいよね(ブレンダ)

鳥みたい僕は飛びたいつばさを広げ大空めざしあなたをめざし
しかし我陸の囚人うごめいてどこにも行けない羽も無い鳥(ボン)

秋田から遠く届いた恋文が気持ちと一緒に灯に溶けていた
あの人にどこかで会った道の端だとおもったけどただ甘い夢(レイモンド)