2019年3月7日木曜日

辞世

蘓誕

日本にはこの世を去る間際に詩を書く伝統があって、その詩は「辞世」と呼ばれます。

「辞」には二つの意味があります:一つは「ことば」、もう一つは「やめることを告げる」(例:辞任、辞職、辞去)、「世」はこの世のこと(世界)です。つまり、この世での存在を辞める別れの言葉です。

起源はいまだに不明ですが、確かなのは禅宗との関係です。(禅僧は死ぬ直前仏教の教えを書き残す習慣があったのがその証。)概して辞世は、仏教における重要な教えを主題とし、人生の儚さ、悟りなどを基にして書かかれます。しかし、江戸時代に諧謔(冗談)、風刺なども辞世の基になった傾向があります。もちろん日本で大事とされること(愛国、自然等々)もよく登場します。

辞世を読むことで作者の最後の感想、感情が感じられます。亡くなる直前に書かれたものからは、きっと正直で純粋な気持ちが伝わることでしょう。そのため技術的な美しさよりも、その心情はかなり強く表現されているという点で素晴らしいと思います。「死」自体、すでに重たくて心に響く言葉。作者は辞世によって死を経験し、その感動が得られることでしょう。

いくつか例を見てみましょう。まず、漢詩辞世から始めます。

吾今為国死 死不背君親 悠悠天地事 鑑照在明神(吉田松陰)
訳:
吾(私)は今、国のために死ぬので、この死は主君や親に背くのではありません。
私の身(体)がどうなっても地の人間の営みは悠々と終わることなく続きます
私が間違っていないことを神は見ています、それだけで十分です。
なお、これは、処刑された人の辞世です。

我死なば酒屋の瓶の下にいけよ。もしや雫のもりやせんなん(守屋仙庵)
訳:
私は死んだら酒屋の瓶の下に死体を置いてくれ
運が良ければ、酒の雫が漏れて滴って来るかもしれません

若い衆や、死ぬが嫌なら今死にやれ。一度死ねばもう死なぬぞや(白隠慧鶴)
訳:
若者よ!もし死ぬのが怖いなら今すぐ死んでみろ!
一度死ねば二度と死なないのだ

曇りなき 心の月を 先だてて 浮世の闇を 照してぞ行く(伊達政宗)
訳:
曇りなく暗闇を照らすような月のように、私は自分の信じている道をただひたすらに歩くことで、国の暗い将来を照らそうとする

1 件のコメント:

  1. 前の三年にわたって、この辞世を作った:

    死んだら気温が何度だろうが、服を脱いでやるよ。

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